廃家電は資源であり、新しく生まれ変わる命のように感じた。
まず、今回の作品のコンセプトについて教えてください。
コンセプトは、“REINCARNATION(リンカネーション)”。これは「再生」とか「転生」という意味ですが、家電のリサイクルをそのまま表していると思いました。実際に工場へ行き、役目を終えた家電たちが解体されてマテリアルに変わるのを見た時、これは廃棄物ではなく資源であり、新しく生まれ変わる命のように感じたのです。
実際にリサイクル工場へ行った感想を教えてください。
工場では機械だけではなく、たくさんの人が手作業で解体しているのを見て驚きました。破砕された家電は、素材やプラスチックの色まで細かく分類されます。僕はモノをつくる側ですが、その過程と同じくらい細かく丁寧に解体•破砕されている。そこに、クリエイティビティを感じましたね。
生まれ変わった家電と人との出逢いに、光のインタラクションを。
オブジェは1Fと3Fに別れていますが、それぞれにテーマはありますか?
1Fの「解体のシャンデリア」は、役目を終え解体されていく家電たちの再出発を、光の輪で美しく照らそうと思いました。3Fはそのままズバリ「再生」。長い旅路を経てマテリアルになったペレットを、光の粒で表しています。この光の粒が沸き上がって新しい製品として生まれ変わる様を、ダイナミックに伝えたいと思いました。
1Fの「解体のシャンデリア」で注目してもらいたいところは?
普段、僕たちはエアコンやテレビの中の構造を見ることはないですよね。だから、ここではアクリルでつくった家電のオブジェを解体して構造を見せることにしました。複雑な要素は排除してシンプルな構造にしているので、家電たちが解体されマテリアルに変わるまでの流れがわかると思います。
3Fの「再生」で注目してほしいこところはありますか?
人と光のインタラクションを楽しめる仕掛けにしています。回収された家電は古く汚れてはいるけれど、使った人の思い出や歴史が刻まれた、とても愛おしい存在。それが、新しいモノに生まれ変わってつぎの持ち主へ渡る。その出逢いに輝きを感じてもらいたくて、インタラクションを使用しました。
リサイクルを考えるのではなく、感じてもらえるように。
やりがいや難しかったところはありますか?
全部がチャレンジでした。通常のアートと違って、わかる人にだけわかればいいというのではなく、リサイクルをきちんと伝えなくてはなりません。でも押しつけがましいのもダメ。多くの人が見た時に、感覚的に受け入れてもらえるストーリーをつくりたかった。リサイクルを考えるのではなく、感じてもらう。とても難しいシゴトでしたが、楽しい挑戦でもありました。
今回のテーマで、なにかインスパイアされたものはありますか?
砂時計です。解体•破砕した家電たちが砂のように細かいペレットになり、新しい家電に生まれ変わる。その工程は、未来の時間へ流れる砂時計のように感じました。また、さまざまな工程を経て生成された高純度なペレットは、自然界の結晶と重なるようです。もともと結晶は好きで、僕の作品の特徴である多面体デザインにも生かされています。3Fの「再生」には、この多面体を大きく使いました。
“なんか、キレイ”“なんか、いいね”と楽しんでもらいたい。
今後の作品づくりに何か影響はありますか?
ありますね。これまでは、いい作品や使いやすいモノをつくることだけに目を向けていましたが、役目を終えた後にそれを受け取って、バラして、また使えるようにすることを考えている人たちがいる。それなら僕も、つくる時から部品を取り外しやすい構造にしたり、リサイクルしやすい素材を選んだりしようと思いました。今回の作品も設計の段階から、解体のしやすさを意識してつくりました。
最後に皆様にメッセージを
リサイクルや技術についてよく知らない方でも、気張らずに楽しんでいただきたいです。実はMEToA Ginzaがオープンしたばかりの頃、三菱電機さんの施設だとは知らずに偶然入ったことがあります(笑)。その時も、いろんなクリエイターさんが技術についてさまざまな表現で発信しているのを見て、普通に楽しく刺激を受けて帰ったことを覚えています。皆さんにも“なんか、キレイ”“なんか、いいね”と感じてもらえたら嬉しいですね。