イベントレポート:スペース・キッズ・プラットフォーム2016

イベントレポート

Space in Ginza ー 銀座の中の宇宙スペース・キッズ・プラットフォーム2016
~JAXA大西卓哉宇宙飛行士の国際宇宙ステーション(ISS)
長期滞在におけるリアルタイム交信イベント~

開催期間:2016年8月30日(火)

2016年7月7日。ソユーズ宇宙船で地球を出発し、国際宇宙ステーション(ISS)に滞在中のJAXA大西卓哉宇宙飛行士。公益財団法人日本宇宙少年団(YAC)では、宇宙のJAXA大西飛行士と子どもたちがリアルタイムで交信するイベントを8月30日に実施しました。この日宇宙とつながったのは、東京、長野、石川、宮崎の4拠点。メイン会場となった東京の「METoA Ginza」から、当日の様子をレポートします。

地球の約400km上空を回っている国際宇宙ステーション(ISS)。その中の日本実験棟「きぼう」から通信衛星を介してJAXA大西飛行士と全国4拠点をつなぎ、子どもたちとリアルタイムにメッセージや質疑応答のやりとりをするというのが、今回のメインイベントです。多くの小中学生が集まった「METoA Ginza」には、YAC理事長で漫画家の松本零士さんも駆けつけ、宇宙との交信イベントを見守っていました。

地上で交信をするのは「METoA Ginza」のほか、長野県の上田創造館、石川県のサイエンスヒルズこまつ ひととものづくり科学館、宮崎県の宮崎科学技術館。それぞれの会場同士も映像でつながれ、各地の子どもたちが宇宙からの交信を今か今かと待ち構えている様子が、「METoA VISION」に映し出されます。その映像が「きぼう」内部に切り替わり、大画面にJAXA大西飛行士の姿が現れると、会場から大きな拍手と歓声が。「大西さん、こんばんはー!」という子どもたちの元気な声とともに、交信イベントが開幕しました。

「こんばんは。みなさんの声援、こちらまでよく聞こえていますよ!」──宇宙からの第一声に、子どもたちは満面の笑顔。残念ながら、宇宙に送信されるのは音声のみでしたが、それでも会場の熱気は十分届いた様子です。ここからは、子どもたちからJAXA大西飛行士への質問タイム。各会場から2〜3名ずつの代表者が“宇宙のギモン”を投げかけます。

まずは、小学2年生からの「宇宙ではどんな音がしますか?ザワザワしていますか?シーンとしていますか?」という質問。これに対し「真空の宇宙空間は無音ですが、じゃあ、宇宙船の中の音を聴いてみましょうか」と、『きぼう』内部の音を届けてくれました。「ISSの中では空気を作る機械やファンがあり、今聞こえているのはその音です。でも『きぼう』はとても静かな実験棟なので、ほかの国の宇宙飛行士からも人気が高く、家族との交信イベントにもよく使われるんですよ」
「日本が世界から期待されていることや日本人だからこそできる役割みたいなことはありますか?」という小学6年生からの質問にも、「『きぼう』には日本にしかない非常にユニークな設備や機能があるんです」と自身の後ろにある二重のエアロックを指さし、ここから船外実験プラットフォームへ実験装置を直接出し入れできるのだと教えてくれました。「また、日本のISS補給機『こうのとり』の積載量は、世界最大(約6トン)。一度にたくさんの生活物資や実験装置を運べるのが自慢です」。三菱電機も開発に携わる「きぼう」や「こうのとり」は、世界でも高い評価を得ているようです。

その後も、宇宙での食事についてやISSでのユニークな慣わし、宇宙飛行士同士のコミュニケーションのとり方など、さまざまな質問が続きます。そのひとつひとつに、言葉だけでなく実際に宇宙食の現物を見せてくれたり、クルーを出迎える際に鳴らすベルの音を聴かせてくれたりと、子どもたちにもわかりやすい形で回答してくれました。そうしたコミュニケーション力の高さもまた、宇宙飛行士に欠かせないスキルなのです。

「宇宙から眺める地球は、本当に美しいです。地上にいるときは、宇宙に憧れていましたが、こうして宇宙に出てみると地球のすばらしさがよくわかります」。その地球にいる子どもたちに向けて、「今日はみなさん、本当にありがとう。宇宙でのミッションはまだ続きますが、その様子はこれからも紹介していきますので楽しみにしていてください」と最後に手を振りながら、くるりと一回転してみせてくれ、交信ミッションは無事完了しました。

この日は、交信イベント以外にも盛りだくさんのプログラムが用意されていました。YACの合言葉「GO TO MARS TOGETHER(一緒に火星へ行こう)」にちなみ、東京大学准教授の宮本英昭先生による講演「火星探査の今と未来」では、火星探査の歴史と最新の探査機が撮影した映像を紹介。また、JAXA大西飛行士のお話にも出てきた「こうのとり」についても、三菱電機宇宙システム事業部の塚原克己が写真と映像を用いて詳しく説明させていただきました。

さらに「コミュニケーション力を鍛えよう!」プログラムでは、4会場の子どもたち全員で課題に挑戦。東京会場の子どもが言葉で説明した図形を参加者ひとりひとりが正確に描く、というミッションを通して伝達能力を高める訓練を行いました。コミュニケーション力を磨くことは、宇宙で活躍するための第一歩。子どもだけでなく、おとなのみなさんも熱心に取り組まれている様子が印象的でした。

JAXA大西飛行士との交信をはじめ、さまざまなプログラムを通じて宇宙に触れた「スペース・キッズ・プラットフォーム2016」。その主役である子どもたちに向けて、YACの松本零士理事長から素敵なメッセージが寄せられました。「私は子どもの頃からずっと宇宙を夢見て漫画を描き続けていました。夢を持つのはとても大事なこと。未来をよりよくするためにも、どうか自分の夢を信じて人生を歩んでください。みなさんの夢を私たちも応援しています」

最後に、「METoA VISION」を介してサテライト会場ともメッセージを送り合い、各地の満足の声とともに本日のイベントは閉幕。ご来場のみなさま、ありがとうございました。